「君の友達」

キャロル・キングやジェイムス・テイラーの演奏で知られる「You've Got A Friend」、邦題「君の友達」。本当にいい曲です。
いい曲ですが、これを歌うとなると大変です。
「あなたが困ったり、悲しんだりしたときは、いつでも呼んでね、すぐに行くから」って歌なのですから。
ジェイムス・テイラーは友情に関する歌をたくさん歌っていますが、この歌も恋人との愛情や、親子の愛情ではなく、あくまで「友達」ってことがポイントなのでしょうね。
スガシカオの歌で、「きみがもし恋人じゃなくて友達だったら、都合よく利用して捨ててしまうかも」って感じの歌詞があるんですが、ほんとの意味で友達を大切にするのは難しい。
「呼んだらすぐ行く」っていうのも難しい。いろいろ事情もあるし。
そんなことができるのは誰？って考えるとどうも神がかり的なものが浮かんでくる。
実際、綾戸智絵さんはこの曲を完全にゴスペルのイメージで演奏しています。
でも僕たち人間は、友達のピンチのとき、助けてあげられないかもしれない、そもそも苦しんでることに気がつかないかもしれない。
そんな自分に対する腹立たしさと、それでもできるだけ力になりたい、という気持ちがこの歌にこめられていると僕は解釈しています。
この歌を歌って時代の寵児と呼ばれたダニー・ハサウェイが、最後は自殺してしまったというのは皮肉なことです。
尊敬する彼のためにも大事に歌いたいと思う一曲なのでした。

text:むらた